真っ白なシーツの上に横たわる幸福よ。でももう行かなきゃいけないみたい。あの人がわたしに言う。「お時間ですよ」いやよ。まだいやなの。意地悪で言ってるわけではないと分かってる。だけどまだここに留まってたいの。わたしは必死にシーツにしがみつく。あの人は猫なで声で繰り返す。「おくすりのじかんでちゅよ」いやよ。いやだにゃー。布地に爪を食い込ませて抵抗するおネコをひっぱりだすのはなかなか大変である。攻防戦の末勝ったのは飼い主メスでした。その後敷布団のシーツに1mmほどの穴が点在しているのを発見。おネコの爪の跡である。シーツを破りおったな。飼い主メスは指先で穴を均しておネコを許してしまう。フローリングの傷には過剰反応するオス大も見て見ぬ振りだ。この家の主従関係が狂い始めている。