耳のないパンを焼く41の方法。

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レビュー・シャドウサイド#34宮島未奈「成瀬は天下を取りにいく」

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宮島未奈「成瀬は天下を取りにいく」を読んだ。2024年本屋大賞、その他多数受賞作です。

成瀬という我が道をいく個性的な女の子と、彼女が住まう大津(と閉店する西武大津店)にまつわる人達のこころの揺れやあれやこれやを描いた青春小説です。

読み終えて「こういう終わり方をするのか!ステキ!」と感じました。なんも伝わらない感想で申し訳ないです。

個性的な成瀬の言動や新しい環境などに、登場人物が迷いながら手応えを感じ自信を持っていくのと対象的に、最後の章で一番空気読まない系の成瀬の自我が揺らいでいくのが印象的でした。確信も戸惑いも、全てが人間の成長とか成熟の過程であると分かるし、語りすぎない最後に読者がその後を描く余白があり、とても良かったです。

あゝ、こんな物語をわたしも書くことができたら

密林レビューも見ました。高評価の中には「読みやすい」「おもしろい」「笑った」などが散見され、それだけが読者の感想の全てではないだろうけど、もうちょっといろいろ読み取ろうぜと思ったり(レビューにありがちな「届きました!今から読みます!」はなんなのアレ)。もちろん(語弊がありそうだが)きちんとしたレビューもたくさんあります。

反対に低評価の意見としては「深みがない」「子ども向け」みたいなのがチラホラ。そこは「優れた小説は難解でなんぼ」的、いささか古い価値観を拗らせてないかなと感じました。大袈裟な帯の文言やメディアでの持ち上げられ方ほどではないという意見もあって、それはごもっともかと思います。あちらもご商売なのでその辺はキャッチーでナンボだと分かるんですが、褒めすぎ煽りすぎは時に人を落胆させますな。確かに帯やポップのいささか「過ぎる」高揚感は、「成瀬は天下を取りにいく」には要らなかったかもしれません。

「成瀬は天下を取りにいく」、今っぽいライトな文章なんだけど、とりわけ思春期の心情の描写も描かれない部分の深さも素晴らしい小説でした。

全然関係ないんだけど「冷静沈着」って打とうとすると「冷静진짜(チンチャ:韓国語で「本当に」みたいな意味だと思う)が出てくるんですけどなに。