耳のないパンを焼く41の方法。

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レビュー・シャドウサイド#36 津村記久子「水車小屋のネネ」

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「家出ようと思うんだけど、一緒に来る?」身勝手な親から逃れ、姉妹で生きることに決めた理佐と律。ネネのいる水車小屋で番人として働き始める青年・聡。水車小屋に現れた中学生・研司…人々が織りなす希望と再生の物語。(BOOKデータベースより)

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良かったです。素晴らしかったです。

主人公はじめ、登場人物がみんな、ちょっとずつ「なにか」を抱えている。過去とか環境とか家族とか、見方によってはわりにシリアスな事情でもあるし、登場人物たちがそれらを消化しきってもいないんだけど、大げさにとらえているわけではなく、淡々と受け入れ(ようとしながら)、静かに前進していく様は、本当に素晴らしいです。主人公姉妹の姉である理佐と、途中から登場する聡が結婚に至る潮となった(であろう)セリフの交わし方とかほんとに。

読み終わって、人生っていうのは、小川の中を上流に向かって歩いていく作業だと思いました。水に足を取られ、なかなか前に進めないものの、前進しなければとどまるか下るかしかなく、それはそれで楽しくないので、ならば進むか、上流を目指して。という感じです。なかなか進めないからこそ、水の冷たさや景色の美しさ、出会いのすばらしさに気づけるのだと。第59回「谷崎潤一郎賞」受賞、「本の雑誌」が選ぶ2023年上半期ベスト第1位、「キノベス!2024」第3位、2024年本屋大賞第2位、納得でございます。

 ボリューミーな物語ですが、全員に読んで欲しい。