遡る事数日。某お店で隣にいらした女性客の話が聞こえてきた。わたしが聞き耳を立てていたわけではない。その女性の声がよく通るので耳をふさいでも聞こえてきたのです悪しからず。
くるっとまとめると彼女の旦那様はよく夕方頃年下のお友達を大勢連れて戻るらしく、彼女はその度に来客に夕食をふるまう。大人男子たちの空腹を満たすべく大量の肉を購入し食事を用意する。しかし彼女は健康にも留意するタイプであり平素から偏った食事をしがちな、特に未婚男性のことを思うと「野菜も用意しないわけにはいかない」。なので毎回作るそうだ「ポテトサラダとか、マカロニサラダとか」。
女性が言い終わると同時に空間を共有していた全員(本人含む)が0.5秒くらい止まった気がした。マカロニは・野菜では・ない。そんな思いがよぎって光の如く通り過ぎていった。多分みんなの中を。
「サラダ=緑系生野菜」わたしたちの中にはそんな意識が根付いている。しかし日常生活において出てくる「サラダ」は高確率で「ポテト」か「マカロニ」である。おかずとして思い浮かぶのも、飲食店でおまけ的にサーブされるのも、マヨネーズで和えたいささかカロリーの高い炭水化物寄りの「サラダ」だ。われわれは「サラダといえば野菜たっぷりヘルシーメニュー」と「サラダといえばポテト・スパゲティサラダ、つまりはハイカロリー炭水化物」というダブルスタンダードの中で生きている。
「カレーライス」という「米×いも」の食べ物に無意識にポテトサラダやスパゲティサラダをつけてしまう女がいる。わたしだ。作り終わると「炭水化物だらけやんけ」と思うのだが、事前に作っておけてある程度保存可能で万人受けするサラダの代表格がポテトサラダ・スパゲティサラダなのだから仕方がない。キャロットラペとか言わないように。少なくともうちの男子たちは食べない。わが子であるちびっこになけなしのきゅうりでもいいから野菜を食べて欲しいとすがる思いでポテトサラダを出す母親は一定数いると思われる。炭水化物のマヨネーズ和えサラダは嫁&母の切なる思いの権化なのだ。
にしても件の女性はすごい。事前っても当日朝か前日夜くらいに知る大人数の来客を賄える力量があるのだから。ほへー。お酒も要るし、締めのリアル炭水化物もいるかもしれない。その場で潰れてしまう人がいれば泊めてあげるしかない。マスオがアナゴさんを8人連れて帰ったらさすがのフネとサザエも狼狽するだろう。大勢の来客を収容できる彼女のご自宅がどんなんなのかも十分聞こえてきたけど、その辺は読者の想像に委ねる。
にんじん入りのポテトサラダに愛を感じる。わたしは入れない。面倒だから。
ダブルスタンダードどうでもいいな。